東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2120号・昭41年(ネ)2377号 判決
被申請人が本件解雇の合理的な理由として主張するところは臨時工を対象としてなされた前示確認書による本工組合と被申請人間の昭和三七年五月一五日臨時工の解雇に関する合意が申請人らに対して効力を有することにあるからこの点につき判断する。
右確認書による合意の内容を検討すると、一は臨時工のうち考試を経て一定の基準に合格したものを本工として採用するという臨時工の本工登格を定めたことであり、他は受験者のうち一定の基準に達せず不合格とされた者は解雇するという解雇の基準を定めたことにあるのであつて、前者は従来行はれて来た臨時工を試験の上本工に採用している慣行を確認したにすぎず、新たに制度、組織を定めたものではない。右合意の主眼とするところは後者であつて、後者は解雇について、特にその基準を定めたものである。それ故右の合意は企業内の労働組織を定めた労働協約の組織的部分といい難く、組織的部分なるが故に協約当事者以外の第三者をも拘束するとする被申請人の所論は採用することはできない。また、右解雇の基準の定めが、協約の規範的部分として一般的拘束力を有するかについて考えて見ると、もともと、労働協約の規範的部分が、第三者たる未組織労働者に一般的拘束力を及ぼすのは組織労働者たる本工組合の団結権を確保し、併せて未組織労働者を保護せんとすることにその目的があり、本工組合と被申請人とが本工組合員についてした労働条件等の合意を第三者に及ぼし労働条件を統一し、均等待遇を確保しようとするに反し、本件合意は本工組合の構成員の解雇基準の定めを臨時工に拡張適用するというのではなく、本工組合外の申請人らを含む臨時工のみの解雇基準につき本工組合と被申請人が合意し、これを臨時工に適用しようとするものであつて、右解雇についての定めは本工組合の団結権に直接関係なく、また試験に合格しなければ、本工になれないというだけでなく臨時工の身分をも失うという内容であつて臨時工の利益を保護するものともいい難く、右合意をもつて第三者たる臨時工を拘束するものとすれば、協約当事者に非らざる申請人らを不利益に拘束する結果となるから右合意のうち後者すなわち解雇について定めた部分は申請人らにその効力を及ぼさないものというべきである。
(荒木 長利 田尾)